不整脈とは

規則正しく、1分間に50~100回脈打つのが正常な脈と言われており、この規則正しい脈を正常洞調律と言います。不整脈とは、脈の速さが極端に遅かったり、速かったり、不規則であることを指します。脈が1分間に50回以下の場合を徐脈(じょみゃく)、100回以上の場合を頻脈(ひんみゃく)といいます。規則正しいタイミングから外れた脈がときどき混ざるものを期外収縮と呼びます。一方、すべての脈の間隔がバラバラとなっているものを絶対的不整脈と呼び、心房細動の時に認められます。

不整脈の症状

不整脈による症状は不整脈の種類によって様々ですが大きく分けると下記が挙げられます。
・動悸(ドキドキする):心房細動や発作性上室頻拍など頻脈性不整脈でよく見られる症状です。期外収縮が連続した場合にも感じることがあります。
脈が飛ぶ、のどが詰まる:期外収縮でよく見られる症状です。一拍だけ脈が飛んで、胸やのどが詰まったような感じがします。一拍脈が飛ぶのと正常な脈を交互に繰りかえすこともあります。
・息切れ、倦怠感:洞不全症候群や房室ブロックなどの徐脈性不整脈に多い症状ですが、心房細動、心房粗動、心房頻拍などの頻脈性不整脈でも認めることがあります。
・失神、めまい:洞不全症候群や房室ブロックなどの徐脈性不整脈に多い症状です。一般的に2-5秒程度脈拍が停止するとめまい、ふらつき、眼前暗黒感などの前失神症状を認めると言われています。6秒を超えて脈拍が停止すると失神し意識を失うと言われています。めまいの症状としては、景色が回転する回転性めまいや、船酔いのような浮動性めまいよりも、目の前が真っ暗になる(眼前暗黒感)ような自覚症状が起こることが多いです。また、心室頻拍や心室細動などの頻脈性不整脈でも失神は引き起こされます。
・胸痛:頻度は低いですが、胸の痛みを自覚する場合もあります。

これらの症状を感じられた場合には詳しい検査が必要な場合もありますので、一度ご相談ください。

不整脈の種類

不整脈は前述のように、脈拍がゆっくりになる徐脈性不整脈、脈拍が速くなる頻脈性不整脈、脈拍が飛ぶ期外収縮に大きく分けられます。本項ではそれぞれの不整脈について具体的に説明していきます。

  1. 徐脈性不整脈
    • 洞不全症候群
    • 房室ブロック
  2. 頻脈性不整脈
    • 発作性上室頻拍
    • 心房細動
    • 心房粗動
    • 心房頻拍
    • 心室頻拍
    • 心室細動
  3. 期外収縮
    • 上室期外収縮
    • 心室期外収縮

徐脈性不整脈

洞不全症候群

心臓には洞結節と呼ばれる、司令塔のような機能を持つ部分があります。洞結節から心臓を動かすきっかけとなる電気信号が発せられ、それが刺激伝統系と呼ばれる電気回路を通って心臓全体に伝わることで心臓が動きます。
洞不全症候群は洞結節がうまく機能しなくなる病気です。

洞不全症候群の原因としては、加齢、虚血性心疾患、高血圧、心筋症、アミロイドーシス、心膜炎、心筋炎、膠原病、薬剤の影響、電解質異常、内分泌異常などが挙げられます。洞不全症候群の頻度は年齢と共に多くなり、60-70歳代が最も多いと言われています。

洞不全症候群で生じる症状は、息切れ、倦怠感、ふらつき、めまい、失神などが挙げられます。

診断には、自覚症状や身体診察に加えて、12誘導心電図や心臓エコー検査を用いて診断します。これらの検査で診断ができない場合には、ホルター心電図(24時間心電図)を行います。洞不全症候群は夜間に見られることが多いため、日中診察時のみでは診断ができないこともあり、ホルター心電図が有用と言われています。

治療については、自覚症状が全くない場合には治療の対象にならないことがあります。失神、ふらつき、前失神や心不全(むくみ、息切れ、胸水貯留)などを認める場合にはペースメーカー治療が必要となります。

房室ブロック

房室ブロックは、心臓の刺激伝導系に異常が起こり、洞結節から発せられた信号が心房から心室へ伝わるのが遅れたり、途絶したりすることで生じる病気です。心室への信号の伝達が途切れると、脈拍が抜け落ちたり、非常にゆっくりになったり、最悪の場合には心停止を起こしたりします。房室ブロックはその程度により、1度房室ブロック、2度房室ブロック、完全房室ブロックに分けられます。2度房室ブロックはウェンケバッハ型房室ブロック、モービッツ2型房室ブロックに分けられます。

房室ブロックの原因としては、加齢、虚血性心疾患、心筋炎、サルコイドーシス、心筋症、電解質異常、迷走神経過緊張、薬剤の影響などが挙げられます。

房室ブロックで生じる症状としては、脈が飛ぶ、息切れ、倦怠感、ふらつき、めまい、失神が挙げられます。

診断には、自覚症状や身体診察に加えて、12誘導心電図、心臓エコー検査を用いて診断します。これらの検査で診断ができない場合には、ホルター心電図(24時間心電図)を行います。房室ブロックが間欠性(異常が出たり消えたりする)である場合には12誘導心電図だけでは診断がきないこともあり、ホルター心電図が有用と言われています。

治療については、失神、ふらつき、前失神や心不全(むくみ、息切れ、胸水貯留)などを認める場合にはペースメーカー治療が必要となります。自覚症状が全くない場合、1度房室ブロックやウェンケバッハ型房室ブロックでは経過観察を行いますが、モービッツ2型房室ブロックや完全房室ブロックではペースメーカー治療が必要な場合があります。

頻脈性不整脈

発作性上室頻拍

発作性上室頻拍は、正常な刺激伝導路とは別に副伝導路と呼ばれる刺激伝導路が心臓内に存在するために、本来一方通行で伝わり消失するはずの洞結節からの信号が心臓内で旋回(リエントリー)するために生じる不整脈です。

症状としては突然の100回/分以上の頻脈を認め、動悸、息切れ、胸痛、たちくらみ、めまい、倦怠感などを認めます。症状は数分で収まることもあれば、数時間持続することもあります。

診断は、病歴や自覚症状に加えて、12誘導心電図や心エコー検査を行います。これらで診断がつかない場合にはホルター心電図(24時間心電図)を行います。

治療はカテーテルアブレーションが効果的であり、推奨されています。診断された場合にはご希望の専門施設へご紹介させて頂きます。

心房細動

心房細動は心房が高頻度(400~600回/分)で無秩序に興奮する不整脈です。心房で発生した興奮は不規則に心室へ伝わるため脈拍も完全に不規則となり、強弱がバラバラになります。心拍数100回/分以上の頻脈となることが多いです。

症状は動悸、息切れ、倦怠感などを生じます。症状の強さは、心拍数、心拍の乱れの程度、心機能などに影響を受けます。発作性心房細動と呼ばれる、心房細動が一時的に起こったり治まったりするタイプの場合が自覚症状を感じやすいと言われています。

原因としては加齢、高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓弁膜症、心筋症、心不全、甲状腺機能亢進症、肥満、睡眠時無呼吸症候群、アルコール多飲、喫煙などが挙げれます。

診断は、病歴や自覚症状に加えて、12誘導心電図や心エコー検査を行います。これらで診断がつかない場合にはホルター心電図(24時間心電図)を行います。

治療は大きく分けて、①脳梗塞の予防、②脈拍の規則正しさを元に戻す治療、③脈拍の数を調節する治療に分けられます。
①脳梗塞の予防:心房細動は正常な脈と比較して脳梗塞の発生率を高めます。心房細動をきっかけとして生じる脳梗塞は半身麻痺などの大きな後遺症を生じやすいです。年齢や基礎疾患の有無によって抗凝固療法(血液サラサラにする薬)が必要となります。
②脈拍の規則正しさを元に戻す治療:心房細動を元の正常洞調律へ戻すための治療です。大きく分けて薬物治療と非薬物治療とがあります。薬物治療は抗不整脈薬と呼ばれる薬を使用します。非薬物治療はカテーテルアブレーション、電気的除細動があります。動悸などの自覚症状がある発作性心房細動や持続性心房細動はカテーテルアブレーションが向いています。一方、発生してから長期間経過した心房細動や、自覚症状がない心房細動については様々な要因を考慮した上で治療方法を決定します。
③脈拍の数を調整する治療:心房細動が長期間持続しており、正常洞調律へ戻らない場合や、自覚症状を認めない場合には内服薬を用いて脈拍を適切な数にコントロールします。

近年はApple watch®などのスマートウォッチで不整脈の有無をチェックできるようになっています。心房細動は早期の介入が望ましいので、疑われた場合には早めのご相談をおすすめ致します。

心房粗動

心房粗動は右心房の三尖弁輪を電気的興奮が旋回(リエントリー)することで生じる頻拍性不整脈です。心房レートは240回/分程度になり、その何回に1回が心室へ伝わるかで脈拍数が決まります。通常は2回に1回のことが多く、脈拍数は120回/分程度になります。

症状は動悸、息切れ、倦怠感などを生じます。

診断は、病歴や自覚症状に加えて、12誘導心電図や心エコー検査を行います。これらで診断がつかない場合にはホルター心電図(24時間心電図)を行います。

治療はカテーテルアブレーションによる根治術が勧められます。

心房頻拍

心房頻拍は、洞結節以外の心房筋由来の規則的な100-250回/分の興奮による頻拍です。

症状は動悸、息切れ、倦怠感などを生じます。

診断は、病歴や自覚症状に加えて、12誘導心電図や心エコー検査を行います。これらで診断がつかない場合にはホルター心電図(24時間心電図)を行います。

治療は薬物療法と非薬物療法とに分けられます。通常は薬物で頻脈発作を抑えたり、発作時の脈拍数をコントロールしたりします。症状が強く再発をするものや、頻繁に起こるもの、心機能が頻脈により低下しているものに関してはカテーテルアブレーションが勧められます。

心室頻拍

心室を起源とする頻拍です。30秒以上持続するものを持続性心室頻拍、それより短く自然停止するものを非持続性心室頻拍と定義されます。原因として心筋梗塞、心筋症、先天性心疾患、心サルコイドーシス、心臓手術後など何らかの器質的心疾患に伴うものと、器質的心疾患を伴わない特発性心室頻拍とに分けられます。治療は薬物療法、非薬物療法に分けられます。非薬物療法はカテーテルアブレーション、植込み型除細動器などがあります。心室頻拍は致死的不整脈と呼ばれ、認めた場合には循環器専門医のいる病院で精密検査・治療が必要です。

心室細動

致死的不整脈と呼ばれる不整脈です。心臓からの有効な心拍は消失し心停止と同等の状態になります。即座に心肺蘇生術、電気的除細動が必要です。直ちに救急対応が可能な病院へ搬送が必要です。

期外収縮

上室期外収縮

上室期外収縮は、本来の規則正しい脈よりも早期のタイミングで心房から自発的に興奮が起こるものです。自覚症状としては脈が一拍飛んだ感じがします。この際に「喉の奥が詰まる感じ」や「胸が押される感じ」を自覚することも多いです。

基本的には生理的なもので治療が不要な場合も多いですが、自覚症状が強い場合に内服薬による治療を行うこともあります。

心室期外収縮

上室期外収縮は、本来の規則正しい脈よりも早期のタイミングで心室から自発的に興奮が起こるものです。自覚症状としては脈が一拍飛んだ感じがします。この際に「喉の奥が詰まる感じ」や「胸が押される感じ」を自覚することも多いです。

器質的心疾患の合併の有無や、甲状腺機能亢進症など心室期外収縮を引き起こす病気が隠れていないかを検査します。自覚症状が強い場合や、心室期外収縮が頻発している場合、心機能低下を引き起こしている場合には治療が必要です。

不整脈の診断・評価方法

  • 12誘導心電図
  • ホルター心電図(24時間心電図)
  • 植込み型心電計
  • 心臓電気生理学的検査
  • 心臓超音波検査

不整脈の治療方法

  • 薬物療法
  • 非薬物療法
    • カテーテルアブレーション
    • 電気的除細動
    • ペースメーカー治療
    • 植込み型除細動器

参考文献
・日本循環器学会 不整脈薬物治療ガイドライン 2020年改訂版
・日本循環器学会 不整脈非薬物治療ガイドライン 2018年改訂版
・日本循環器学会 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン 2022年改訂版
・医学書院 不整脈 ベッドサイド診断から非薬物治療まで 大江透